2010年4月24日土曜日
100万円の家づくり
2間×3間の小屋を建てるにあたって、木造軸組み工法(在来工法)にこだわったのには理由がある。木は、土や鉄やコンクリートその他の建設資材に比べ、何となく扱いやすく思えたこと。大工だった親父の仕事を見て育ったからだが、何となくそう思っただけで、自信なんかなかった。経験もなかった。
現代の建築ではほとんど「プレカット」といって仕口や継ぎ手を機械で加工する。しかし、家造りの中で最もおいしい部分を、大工仕事の醍醐味にあたる工程を、プログラミングされた工場の機械にゆだねるのはいかがなものか、と小生は思った訳である。そして、大工として一番熱中できるのが木材の刻みであり、それを最も生かした工法が木造軸組み工法だと考えた次第である。
とはいえ、仕口といったって何種類あるのか、どこにどんな仕口が必要なのか、何の知識もなかった。そこで適当な教科書を探した。
たまたま書店で手に取ったのが、小笠原昌憲著「100万円の家づくり」である。そこには2間×3間の木造平屋の小屋を造るための、素人にもできる仕口や継ぎ手の加工の仕方が寸法入りで書いてあった。しかも尺貫法で。大工仕事は間、尺、寸、分の尺貫法でないと後でいろいろ不都合が出てくるのだ。
その後、この本は小生の小屋づくりの唯一のタネ本になった。
頼んでいた木材が現地に到着した時は、もう逃げ道はないんだと実感した。それまでに頭の中で何度も図面を引き直し、基礎、刻み、建前、屋根、床や壁と、各工程のシュミレーションを繰り返した。細かな部分を想像してはああでもない、こうすればなどと工夫してみたりした。やってみないと分からない、やってみて失敗に気づき、やり直すことも多いだろう。とにかくやってみることだ、自分の腕と頭を信じて。あとは臨機応変、時間はいっぱいあるのだから。
失敗しないためにはまず模型を作ってみるのが一番と「100万円の家づくり」にも書いてあるが、確かにそれが最良に違いないが、それをやるとそれだけで何となく完遂したような気になって、本番でかえって甘くなってしまうのではないかと危惧したので、模型は作らなかった。
実際に試みた仕口は、腰かけ蟻(あり)継ぎ、襟(えり)つき小根止めほぞ差し、腰かけ鎌継ぎなど。墨つけに大工の持ち物の象徴のような墨つぼも用意したが、結局使わなかった。3Bの鉛筆の方が具合がよかった。電動丸ノコと電動角ノミを駆使し、手ノコとノミは補助的に使った。これも「100万円の家づくり」に書いてあった。
それにしても、電動角ノミの威力はすごかった。1寸幅のほぞ穴を開けるのに1分もかからない。四角い鉄の塊の中に回転するキリが仕込んであって、レバーを回すと、ガーっというものすごい音とともに半ば強引に木材に四角い穴を開けてしまうのである。
価12万円の値札をホームセンターで見た帰り、古道具屋で偶然同じものを1万円の中古で見つけた。3本のレバーの1本が欠損しているが、支障はない。これがなかったら、木材刻みはもっと長引いていた。というよりノミでこつこつとほぞ穴を開ける作業にうんざりしていたに違いない。角ノミ様々である。
お陰で2008年10月中旬に始めた刻み作業は、週2~3日の割で続き、翌2009年1月に終わって棟上げにこぎつけた。
やればできるじゃないか、どんなもんじゃい。
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