小屋にはまだ名前がない。名無しでも一向に構わないのだが、将来、鴨長明のように「方丈記」みたいな名作を残すことになれば名前があった方が便利、などと思って候補名を考えた。
いくつかの案と看板の板を持って、アラーキーこと荒木経惟氏に看板書きを頼んだら、候補の中から「プレタポル亭」を選んでくれたのはいいとして「ノ」を加えて「プレタポルノ亭」としてしまった。
家に持ち帰って妻に見せたら、猛反発を食った。「そんな看板出したら、絶対行かないから」。
今のところ、看板の裏に書いてくれた無難な方を出している。
狐狸庵の主人はひそかに「丹波の黒豆」の種子を取り寄せて栽培し、新品種の「山瀬大黒」だと言いふらして悦に入っている。山形県鶴岡市の特産品「だだちゃ豆」も、門外不出の種子を某ルートで手に入れ、本場ものよりおいしいと言って「山ちゃ豆」と名付けている。ことほど左様に名前は大事である。
しかし、小屋にはまだ名前がない。「山瀬庵」などと安易な名前はつけたくない。かと言って「△△ヒルズ」やら「○○レジデンス」やらは似合わない。別荘でも、邸でも、屋敷でもない。何か名案はないものか。
以前考えた候補は以下のとおりである。
ひがくれ亭 もしかし亭 わんぱた庵 たそがれ亭 荒川土亭 ゆーとぴ庵 なみたい亭 ゆまに亭 ぼへみ庵 つかいす亭 はりぼ亭 つぶねり庵 ひらやだ亭 おしなべ亭 しびり庵 てまえがっ亭 なんちゃっ亭 てくにし庵 すきかっ亭 まいのり亭 とれび庵 なれのは亭 あのてこの亭 来年度予算庵 うらおも亭 プレタポル亭 ちょっとまっ亭 |
考えているうち、何の名前を考えているのか、自分でもわからなくなった。
もしかすると、名前が決まらないうちに台風一過、小屋は跡かたもなくなっていたというのが一番この小屋にふさわしいのかも。